挨拶

はじめてご覧になる方へのご挨拶

2005年8月、 ここに、新しい生活の場を作りました。名づけて「ケアタウン小平」です。 人が生きている場所は、そこが生活の場で、それぞれの行動と移動につれて、人の数だけあります。 そして、人はその場でかけがえの無い人生を「表現」しているとも言えるでしょう。
では、なぜここに新しい生活の場を作ったのか? そのことをまず、ご説明したいと思います。

ホスピスから生まれたケアタウン構想

ここから歩いて15分ほどの小金井市桜町に、桜町病院聖ヨハネホスピスがあります。
私は、1990年頃から2003年まで、ホスピスコーディネーターとして、そこでのホスピスケアの計画と実際に参加して、 2万人以上の人と出会いました。
その出会いは、多弁な相談であったり、言葉にならない沈黙の「声」であったりしました。
いずれの「声」も、死を自分の人生の視野の中に置いたときに発せられる根源的な”なぜ”を孕んでいたように思います。
ここ「ケアタウン小平」は、聖ヨハネホスピスの「声」をいかし、ここに住む人や訪れる人、ここで仕事をする人が、融合し、 それぞれに響きあい、こだましあう、生活の舞台となる「集合住宅+α」です。
ホスピスは、共同体(コミュニティ)の一つのかたちです。その一番の特徴は、触れ合う人間関係を大切にし、 互いを排除しないことだと言われます。相手との関係を否定して断ち切るのではなく、 互いに認め合い、繋がろうとするのです。

ケアタウンはコミュニティの上に

「ケアタウン小平」は、福祉制度上の老人保険施設や医療制度上の緩和ケア病棟などの所謂「施設」ではありません。
ここでは、地域に根ざした普通の生活の中に”ケアという関係で結ばれた共同体(コミュニティ)”を作っていこうと考えています。
ところで、ケアという関係は病気や障害の方々だけに特別に提供されれば良いというものでしょうか?違うと思います。 病気や障害で苦痛を感じているのでなくても、解決の難しい困難を抱えている人は、ケアを必要としています。 小さな子どもからお年寄りまで、手を貸して欲しい人に、必要な時にそっと手が添えられる関係を築き、互いに尊重し、 支え合う生活を考え、実行しようとしています。
この支え合いをサポートしてくれるのが、 NPO法人「コミュニティケアリンク東京」です。 このNPOは、訪問看護ステーションや介護保険のデイサービスセンターなどの事業活動を行います。 また、介護保険でカバーされるヘルパーステーションやケアマネージャーのオフィも入居しています。 それらのサポートを利用して、ここで一人暮らしをつづけて楽しんでみたいという方に入居していただく「いつぷく荘」は、 グループホームや高齢者専用住宅、有料老人ホームとは違うアパートとして、居住の場を提供しています。
もちろん、国・都・市からの制度上のサポートを利用することができます。 けれども、ここでの楽しみは、ケアを一方通行で受けるだけではありません。入居される貴方も、 ケアを必要としている隣の人に手を差し伸べてください。

コミュニティの三つの「縁」

地域社会と呼ばれる「地縁」。家族社会に代表される「血縁」。 この二つの縁が、目に見える従来の共同体を形成してきたといわれます。 それらの目に見える縁を、 見えないところで繋いできた「縁」をここでは、大切にしたいと思っています。 現代社会では、目で見、手で触れない「縁」は、人々から忘れ去られ、時に拒まれているようにも思えます。
「地縁」や「血縁」といった目に見える縁ともう一つ、目に見えない人と人をつなぐ縁を、 ここでは「好縁」と名付け、「好縁」をとおして、おおらかで自由なそれぞれの自律で交流をしようではありませんか。

多様さを結ぶ「好縁」を大切に

「集合住宅+α」の住まい方は、今まで互いに見ず知らずで、 別々の生活を送ってきた人々が「縁」を結びあいながら新しく作る生活です。
そこで、互いの自由を尊重しあうには、関係する人々の間で解決しなければならない課題を、いくつも経験することでしょう。
それでもここで”楽(らく)シテイキルよりも、自ら楽(たの)シクイキル”好奇心にあふれた多様な人々の集まりで、 話し合い理解しあいながら工夫して生活していきたいと思います。
ここは、そのように人と人とを結びつけてくれる縁を「好縁」として、 お互いにそれぞれの好きなことを大切にして暮していきたいのです。

株式会社暁記念交流基金 代表取締役 長谷公人
株式会社 暁記念交流基金
代表取締役 長谷 公人